MAZDAのCセグメント、「MAZDA3」。SKYACTIV-D 1.8とe-SKYACTIV G 2.0のどちらも所有歴のある僕が、走りの比較などを中心に、ドライブした感想を紹介します。
同価格帯の国産メーカーの中でも群を抜いてデザインが良い(と僕は思っている)MAZDA3。エクステリアデザインや内装の質感も勿論良いのですが、今回はそのエンジンについてのお話。
僕は現在MAZDA3のe-SKYACTIV Gという、2.0Lレギュラーガソリン+マイルドハイブリッドエンジン搭載モデルに乗っています。昨年の11月末納車だったので、現在約3カ月目。その前のクルマはというと、MAZDA3の1.8Lディーゼルエンジンモデル、SKYACTIV-Dを約4年所有。
同じ車種でもエンジンが変われば走りは全くの別物。ディーゼルからガソリンに乗り換えて、それぞれの得手不得手、特徴なんかがより鮮明に見えてきました。
一概にどちらの方が良いというものはありません。それぞれに違った良さがあります。
僕が次にまたクルマを乗り換えるときに、どちらかのエンジンから選ばないといけないとしたら、かなり迷うでしょう。それは走りの性能、コスト面の良し悪しだけでなく、普段クルマをどのように使うかといったライフスタイルによっても、どのモデルがハマるかが変わってくるから。


e-SKYACTIV GとSKYACTIV-Dのカタログスペック&実際乗った比較
まずはそれぞれのスペック比較をまとめてみました。なお、僕はAWDには乗ったことがないので、当記事では2WDの比較となります。
燃費はディーゼルの圧勝
走行モード | e-SKYACTIVE G 2.0 | SKYACTIVE-D 1.8 |
---|---|---|
WLTCモード | 16.4km/L | 21.2km/L |
市街地モード | 12.6km/L | 16.9km/L |
郊外モード | 16.9km/L | 20.9km/L |
高速道路モード | 18.4km/L | 24.1km/L |
カタログスペックを見ても燃費はディーゼルに軍配が上がるのは一目瞭然。実際の走行でも同じく、燃費はさすがのディーゼルが凄く良かったなという印象。もっと言うと実燃費の比較ではカタログ数値以上の差がつきます。
というのもディーゼルエンジンモデルの実燃費は、僕の使用環境では概ねカタログスペックに近い21km/L前後、条件が揃えばそれよりも良い燃費を叩き出していました。エアコンを使用する夏場は18〜19km/Lほど。
対してガソリンエンジンのe-SKYACTIVE Gは、実燃費11km/L付近を行ったり来たり。納車してから今日まで近所のスーパーへ買い出しといったいわゆるチョイ乗り中心になってしまっているので、あまり燃費が伸びないのは仕方がないかもしれません。
それでも何回かはロングドライブに出かけているので、そこで稼いだ燃費がなければおそらく、普通にひと桁台の平均燃費になってしまっていると思います。これから夏のエアコンを酷使する季節にはもっと燃費が落ちるでしょうから、ディーゼルとの差はまだ拡がりそうです。
エンジン出力・トルクと加速感
出力・トルク | e-SKYACTIVE G 2.0 | SKYACTIVE-D 1.8 |
---|---|---|
エンジン最高出力 | 115kW(156PS)/6000rpm | 95kW(130PS)/4000rpm |
エンジン最大トルク | 199N・m(20.3kgf・m) /4000rpm | 270N・m(27.5kgf・m) /1600~2600rpm |
モーター最高出力 | 5.1kW(6.9PS)/1800rpm | なし |
モーター最大トルク | 49N・m(5.0kgf・m) /100rpm | なし |
カタログスペックの違いは上の表の通り。
ディーゼルのSKYACTIV-Dは停止状態からの発進は苦手。ここはディーゼルエンジンの弱点なので仕方の無いところではありますが、レスポンスが今ひとつなのと、1速〜2速のターボが効き始めるまでの元気の無さがどうしても気になってしまう。途中の年次改良で初期型よりはかなり改善されているようですが、それでもガソリンエンジンと比較してしまうと劣ります。
ガソリンのe-SKYACTIV Gは、停止状態からの発進直後からスムーズな加速とエンジンレスポンスの良さを実感。マイルドハイブリッドのモーターの恩恵も受けているはずなのですが、これに関しては乗っていてハッキリと分かるレベルではないですね。あくまでエンジンを陰からアシストしてくれているようです。発進加速だけに注目すると、ディーゼルエンジンモデルから乗り換えた身としては正直、「これまでストレスだった部分が無くなった」といった感じ。
それでもギアが2速・3速と上がって、30〜40km/hあたりから一気に巡航スピードへ向かう加速はディーゼルが一枚上手。低回転域から太いトルクを発揮するディーゼルエンジンの力強い加速は、中速域が一番その実力を実感できます。
登り勾配での加速もトルクのあるディーゼルはさすがといったところで、シフトダウンせずともそのままのギアで、低回転からグングン加速してくれる。ガソリンエンジンも変速して回転数が上がればその加速力に不満はないですが、ディーゼルの余裕ある加速が懐かしく思えることも。
加速についてまとめると、ガソリンエンジンモデルはスムーズでクセの少ない伸びやかな加速、対してディーゼルエンジンモデルは停止状態から始めはちょっと物足りず、そこを乗り切ったらターボでグンッと加速するクセのある乗り味といった感じ。
車重について
- e-SKYACTIV G 2.0 ・・・ 1380kg
- SKYACTIV-D 1.8 ・・・ 1420kg
ディーゼルのほうが重く、その差はカタログ数値で40kg。
主にエンジンの重さによる違いが大きいはずで、フロントヘビーな印象がディーゼルのほうがより色濃い。そのせいなのかMAZDAが意図的にそういうセッティングにしているのか分かりませんが、ステアリングもディーゼルのほうが重たかったように思います。良く言えば重厚感がある操作性。
街乗り・ワインディングともに軽快感はガソリンのほうに分があるということになるんですが、そうはいってもe-SKYACTIV G 2.0モデルもそこそこの重厚感を持ち合わせています。軽快さを重視するなら、今回は紹介していませんがガソリンの1.5Lモデル、SKYACTIV-G 1.5が良い選択肢になるかもしれません。
アイドリングストップ時のe-SKYACTIV Gの挙動が気になる…
MAZDA3にはi-stopというアイドリングストップ機能が付いています。
ガソリンエンジンのアイドリングストップからの再始動はとても静かで素早く、振動がしっかり抑えられています。ディーゼルもかなり頑張ってはいますが、ガソリンエンジンと比べてしまうとやはり振動が大きいのと若干ラグ感あり。
しかし個人的にそれ以前の問題なのが、マイルドハイブリッドのガソリンエンジンは、車速がゼロになる前からエンジンが停止してしまうという点。
ディーゼルエンジンは条件が満たされた状態で、車速ゼロかつブレーキペダルを一定以上踏み込むことでi-stopが作動するという仕様でした。なので、長くなりそうな信号待ちではブレーキペダルを踏み込んでi-stop、一時停止の標識で停止してすぐに発進したいときはブレーキペダルを踏み込まないようにしてエンジンを止めないようにという具合に、慣れてしまえばドライバーがアイドリングストップするorしないを意図的に操作することができます。
対する2.0Lガソリンエンジンモデルは、減速していくとある時点でエンジンが停止。そこから停車まではモーターを利用して走ります。ただモーターだけの力というのは微々たるもので、エンジンが停止した時点でクリープ現象による推進力を失うので、ブレーキのタッチが急激に変化。そのまま停車に向けていつもの調子でブレーキペダルを踏み続けると、踏力が若干強すぎていわゆるカックンブレーキのような格好悪い運転になってしまうんですよね。
慣れの問題なのかもしれませんが、僕の場合はいくら経験しても一向に克服できそうにないです。有車速時のエンジン停止が作動したときのペダル踏力には異常な繊細さが求められる気がします。そもそもi-stopが作動するときしないときがあるので、それぞれの状況に合わせてブレーキ操作に違う対応を求められるのがストレスでしかありません。
というわけで僕はディーゼルからガソリンに乗り換えて以降、i-stop機能はオフにして全く使わなくなってしまいました。燃費を考えるとデメリットかもしれないのですが、細かいこと気にせず楽しく運転したいので。
ディーゼルエンジンモデルはDPF再生に注意
ここからはディーゼルエンジンモデルに限ったお話です。
ディーゼルエンジンはその排気の中にススが含まれており、このススを捕まえるためにDPFというフィルターが搭載されています。もちろんそのままだとススがたくさん溜まって詰まってしまうので、溜まったススを定期的に燃焼させて除去するDPF再生を行う必要があります。
このDPF再生、必要な時に自動でやってくれるのですが、水温80℃以上のときに20km/h以上の速度で約10〜20分走行すること、といった条件があります。もし走行中にDPF再生が開始された場合、完了する前にエンジンを止めてしまうと、終わらなかった分は次回に持ち越し。
なのでこのタイミングで走行時間10分程度かそれ以下のチョイ乗りを繰り返してしまうといつまでもDPF再生を完了することができず、ススがどんどん蓄積されて燃費やパワーの低下、最悪の場合エンジンに不具合が生じる可能性もあります。MAZDAも週一回は30分以上の連続走行することを推奨しており、ライフスタイル上そうすることが難しい場合はディーゼルエンジンモデルの購入は避けた方が賢明な判断。
まとめ
最後に雑観ですがまとめると、
ガソリンはディーゼルの苦手とする初期加速の応答性の高さが秀でており、クセのないエンジン特性で誰でも乗りやすい。街中の信号待ちが多いシーンで扱いやすいクルマです。回転数を上げれば十分なパワーがあり、スポーティーな走りと音を楽しめるのも魅力的。しかし燃費はお世辞にも良いとは言えず、マイルドハイブリッド搭載といってもどうやら燃費のためのシステムではなさそうと言う点には注意。
ディーゼルは発進直後の鈍い加速感は気になるところで、ストップアンドゴーの多い街中ではストレスに。それ以外の領域では、低回転の実用域から高いトルクを発揮し、低燃費ながら圧倒的な中間加速を楽しめる。軽油なので燃料代も節約することができますが、この辺りは車両本体の価格差もあるので、どちらのほうがトータルの費用を抑えられるかはご自身の走行距離などを考慮して試算してみる必要があります。
前項で紹介したDPF再生の注意点をクリアできるなら、ディーゼルエンジンも是非検討して欲しいです。
もしいま購入を検討していて、どのエンジンを選ぶか迷っているなら、ディーラーで全てのエンジンを試乗してみることをおすすめします。限られた時間で細部のチェックまで行うのは難しいと思いますが、ザックリその違いを体感してみるのもいい判断材料です。どちらも違う魅力があるので余計に迷ってしまうかもしれませんが。